ローカル線レッドデータ
今後、廃止されるかもしれないJRローカル線をピックアップし、路線ごとの置かれた事情などを述べています。是非今のうちに乗っておいてください。
室蘭本線(沼ノ端〜岩見沢) 津軽線(蟹田〜三厩) 山田線 花輪線 陸羽西線 米坂線 久留里線(久留里〜上総亀山) 名松線 大糸線(南小谷〜糸魚川) 越美北線 小浜線 姫新線(上月〜新見) 因美線(智頭〜東津山) 芸備線(新見・備中神代〜三次) 福塩線(府中〜塩町) 木次線 小野田線 筑肥線(山本〜伊万里) 吉都線 日南線 指宿枕崎線(山川〜枕崎)
一応の記載基準 「国鉄分割民営化時の扱い」「乗車密度」について
室蘭本線(沼ノ端〜岩見沢)
路線紹介→札幌周辺の路線図(追分〜岩見沢) 室蘭・苫小牧周辺の路線図(沼ノ端〜追分)
国鉄分割民営化時の扱い
室蘭本線(幹線)の一部のため廃止対象にはならず。
当区間の乗車密度(2015年)
500人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
岩見沢周辺で取れた石炭を室蘭や函館へ運ぶ路線として大きな役割を果たしてきました。現在の室蘭本線は長万部〜苫小牧〜岩見沢間の本線と東室蘭〜室蘭間の支線から成るように書かれている文献が多いですが、元々は室蘭から岩見沢を結ぶ路線として建設され、その後長輪(ながわ?)線として建設された長万部〜東室蘭間を編入して今の形になっています。つまりは長万部〜東室蘭間が「支線」となります。
その後、函館本線と比べて勾配などが緩い長万部〜沼ノ端間は函館と札幌を結ぶ幹線として重視され特急列車が多く走るようになましたが、当項で取り上げている沼ノ端〜岩見沢間は石炭輸送がなくなり、札幌を通らないことから利用は低迷しています。(苫小牧岩見沢間の移動需要は少ないながらあるようですが)
現在は1〜2両の当区間折り返しの普通列車、函館・室蘭方面から道東・道北へ向かう貨物列車が当区間経由で運転されていますが、運転本数の割に複線区間があるなど過剰な設備がJR北海道から指摘されています。(が、それらを撤去する費用も出せない状態) また、岩見沢〜三川間は路線バスが1〜2時間に1本程度運転されており、この点でも今後が心配されます。
北海道は札幌近郊以外のすべての路線を当ページに載せてもいいくらいですが、他所ではあまり取り上げられない当区間のみ載せています。
津軽線(蟹田〜三厩)
路線紹介→青森・青函エリア 鉄道とバスを乗り継いで竜飛崎。
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。青森付近の利用者が多かったのだと思われます。
当区間の乗車密度(2016年)
116人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
津軽線の末端(北側・非電化)区間で、竜飛崎への観光利用のみで持っているような印象です。南側(青森〜蟹田)は電化されていて、本数はそれほど変わりませんが、北側と南側との格差が広がっている印象です。
花輪線(好摩〜大館)
路線紹介→青森県・青函エリア(十和田南〜大館) 秋田岩手エリア(好摩〜十和田南)
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「平均乗車キロが30kmを超え、輸送密度が1,000人/日以上」のため存続しました。
当区間の乗車密度(2016年)
377人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
盛岡と秋田・弘前・青森を結ぶ急行列車が運転されていました。が、東北新幹線が盛岡まで開業し、東北自動車道が当線に沿って建設されたことから、これらは廃止になっています。(大阪周辺で言えば姫新線のような路線)
さらに東北新幹線が八戸まで延伸した際には、東北本線に乗り入れていた盛岡〜好摩間が3セク化され、運賃が割高になっています。
沿線には八幡平などの観光地や温泉・スキー場が点在しますが、当線を利用してアクセスする人は多くない印象です。十和田南駅は十和田湖の最寄り駅ですが、今は他の駅からアクセスする方が便利なため季節運行になっています。また、十和田南駅は珍しい「平地のスイッチバック駅」です。
山田線(盛岡〜宮古〜釜石)
路線紹介→秋田岩手エリア
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「並行道路未整備」のため存続しました。どのあたりが「未整備」だったかは不明。
当線の果たしてきた役割と近年の動き
盛岡〜宮古間は列車の本数は少ないものの、並行して路線バスが毎時1〜2本運転されていて、非常に厳しい状況です。2016年から2017年まで災害で長い期間不通になっていましたが、復旧が遅れたことも気になります。
宮古〜釜石間は東日本大震災で大きな被害を受け不通ですが、2019年3月に復旧後三陸鉄道に移管されることが決まっています。
陸羽西線(新庄〜余目)
路線紹介→宮城山形エリア
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「平均乗車キロが30kmを超え、輸送密度が1,000人/日以上」のため存続しました。
当区間の乗車密度(2016年)
389人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
かつては東京や仙台と山形県庄内エリアを短絡する路線として夜行列車が運転されていました。JRになっても山形〜酒田間に急行「月山」が運転されていましたが山形新幹線関係の工事のため運転終了となりました。
現在はほぼ線内運転の列車のみです。山形新幹線を介して東京や山形から酒田を結ぶ経路の一つとなっていますが、利用者の減少が激しい路線になっています。
「奥の細道最上川ライン」という愛称があり、車窓からは最上川の流れを楽しむことができます。
米坂線(坂町〜米沢)
路線紹介→新潟エリア
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。
当区間の乗車密度(2016年)
405人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
新潟と山形や仙台を結ぶ急行列車が運転されていました。JRになっても新潟〜山形間に急行「べにばな」が運転されていましたが、山形新幹線建設による奥羽本線標準軌化により新潟と山形を直通できなくなり、今は快速列車、それも線内は各駅に停車になっています。
新潟県と山形県の県境付近は人口希薄地帯なので、利用は低迷しています。(18きっぷなどの利用期間内はそれなりに利用者はいるが・・・。)
久留里線(久留里〜上総亀山)
路線紹介→路線図・千葉房総編
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。
当区間の乗車密度(2016年)
122人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
県営鉄道して木更津〜久留里間が開業し、国有化後、現在の上総亀山駅まで開業しています。その後、房総半島を横断する路線となる計画もあったようですが、それは実現しませんでした。
房総半島内陸部の皆様の通勤通学に重宝され、現在は沿線の学生が乗客の中心と思われますが、末端区間の久留里〜上総亀山間は本数が減らされ、両数が変わるためにこの区間だけを往復する列車もあるなど厳しい状態です。上総亀山駅近くには亀山ダムがあり、東京にも近いことから行楽客の利用も多くあるそうですが・・・。
名松線(松阪〜伊勢奥津)
路線紹介→紀伊半島伊勢の路線図
国鉄分割民営化時の扱い
第2次廃止対象路線に指定。その後、「並行道路未整備」のため指定を取り消され存続しました。今も家城〜伊勢奥津間の並行道路は狭隘路が多いです。
当区間の乗車密度(2008年)
333人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
名張と松阪を結ぶ路線として建設されましたが、現在の終点である伊勢奥津駅まで行ったところで工事は終了しました。松阪から名張までの鉄道は、現在の近鉄大阪線によって実現されています。上図に近鉄線も付け加えていますが、もし伊勢奥津〜名張間を建設する場合、どういうルートにする予定だったのでしょうか?
災害で不通になったことも何度もあり、最近でも2009年の豪雨災害により7年間、家城〜伊勢奥津間が不通でした。
現在は津市の一部になっている美杉村にお住まいの皆様が大切なお客様です。松阪〜家城間は、標券閉塞という珍しい閉塞方式で、家城駅では「標券」の受け渡し風景も眺められます。
大糸線(南小谷〜糸魚川)
路線紹介→青春18きっぷの旅(北信州・上越)
国鉄分割民営化時の扱い
乗車密度4000人以上(松本〜糸魚川間全線で)のため、廃止対象とはならず。
当区間の乗車密度(2016年)
100人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
大糸線は松本〜糸魚川間の路線ですが、南側の松本〜南小谷間が電化されJR東日本の管轄、北側の南小谷〜糸魚川間は非電化でJR西日本の管轄です。北側の南小谷〜糸魚川間は人口空白地帯で県境をはさむこともあり利用者は元々少なかったと思われます。それでも一時は、大阪からのシュプール号の運転などのため交換設備が増設されるなどもしましたが、それがなくなった後は1〜2両の普通列車がこの区間を行き来するだけになっていて、近年はラッピング車両が走る程度で、これといったてこ入れもないようです。
災害で長期間不通になったことも度々あります。三江線がなくなり、おそらく全国のJR線で最も利用が少ない路線になっています。
越美北線(福井・越前花堂〜九頭竜湖)
路線紹介→湖西線・北陸本線(福井以南)他
国鉄分割民営化時の扱い
第2次廃止対象→「並行道路が積雪で10日以上通行不可能になる」のため存続しました。越前大野〜九頭竜湖間がこれに当たります。
当区間の乗車密度(2016年)
423人/日。1987年と比較すると半分以下になっている路線が多い中、当線は検討していると思います。(ちなみに1987年の乗車密度は772人)
当線の果たしてきた役割と近年の動き
福井県と岐阜県を結ぶ越美線として建設され、岐阜県側は「越美南線」として開通していましたが、北線・南線がつながることはなく、南線は第3セクターとなり、その後も路線バスが北線と南線を結んでいましたが廃止になっています。
「九頭竜線」という愛称が付けられていて、駅ホームの案内表示や車内放送では「九頭竜線」の方が多く使われています。
2004年の豪雨災害で長期間不通になっていましたが、2008年に全線が復旧しています。それでも元から利用は少なく、今後が心配です。
小浜線(敦賀〜東舞鶴)
路線紹介→湖西線・北陸本線(福井以南)他
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「平均乗車キロが30kmを超え、輸送密度が1,000人/日以上」のため存続しました。沿線の観光地への利用客が多かったものと思われます。
当区間の乗車密度(2016年)
1083人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
山陰本線と北陸本線を結ぶ路線として、山陰(米子や出雲市)から当線経由で福井や金沢へ急行列車が運転されていました。また、沿線には観光地も多く、それに対応すべく大阪や京都からの急行列車も運転されていました。
山陰と北陸を結ぶ列車は分割民営化までに廃止され、近年まで多客期に京都から東舞鶴経由で特急が運転されていましたが、現在は普通列車のみの運転になっています。中長距離列車に関しては北陸本線などの特急網が整備され、支線区に乗り入れる列車がダイヤ設定上問題になったことも廃止の原因かと思います。その後小浜線は電化されますが、近年は並行する高速道路も開通し、このことも中長距離列車の設定を難しくしていると思われます。
今は地元の学生が主なお客様ですが、沿線の原発で働く方々も結構利用しています。(作業着のままで乗っているのですぐにわかる)
北陸新幹線が小浜経由で建設されることが決まり、このことも小浜線の今後に影響を与えそうです。
姫新線(上月〜津山〜新見)
路線紹介→山陽本線(姫路〜糸崎)と周辺路線
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。主に起点である姫路周辺で利用が多かったと思われます。
当区間の乗車密度(2016年)
上月〜津山:435人/日
津山〜中国勝山:888人/日
中国勝山〜新見:326人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
京阪神と岡山県北部や鳥取を結ぶ路線として急行「みささ」「みまさか」が当線経由で運転されていましたが、中国自動車道が開通すると高速バスに利用者が流れ、これらの急行は廃止されました。
その後も姫路と津山を結ぶ快速列車が運転されていましたが1999年に廃止となり、現在は姫路と津山を乗り換えなしで移動することはできなくなっています。近年は姫路〜上月間は高速化事業により所要時間が短縮されましたが、それ以外(当項で取り上げている)がさらに悲惨になっています。
関係ないですが、中国自動車道と併走するところがいくつかありますが、そこを走る車にどんどん追い抜かれていくのが悲しいです。
因美線(智頭〜東津山)
路線紹介→山陰本線(浜坂〜米子)と周辺路線
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。
当区間の乗車密度(2016年)
智頭〜東津山:195人/日
(鳥取〜智頭:3757人/日)
当線の果たしてきた役割と近年の動き
かつては鳥取と岡山を結ぶ急行「砂丘」、大阪と鳥取を姫新線経由で結んでいた急行「みささ」が当線を経由していました。その当時は当線はタブレット閉塞で、急行が停車しない交換可能駅では走りながらのタブレットの受け渡しが見られた路線です。
智頭急行線が開業すると北側の鳥取〜智頭間に特急「スーパーはくと」が走るようになり、やがて「砂丘」に代って特急「スーパーいなば」が智頭急行線経由で鳥取〜岡山間を走るようになりますが、鳥取→智頭→上郡→岡山という経路で運転され、当線は通らなくなりました。それ以来、本項で取り上げている智頭〜東津山間は普通列車のみの運転となり利用は激減。その後は他の路線と同じように本数が減らされています。
最近は春と秋の週末に「みまさかスローライフ」なる臨時観光列車が運転されています。運転当日は2時間前から並ばないと座れないほど混雑する列車ですが、春秋各2日程度の運転なので、焼け石に水だと思います。
芸備線(新見・備中神代〜三次)
路線紹介→山陽本線(福山〜岩国)と周辺路線。
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。広島周辺の利用が多いために残った路線です。
当区間の乗車密度(2016年)
備中神代〜東城:81人/日
東城〜備後落合:9人/日
備後落合〜三次:225人/日
(狩留家〜広島:9306人/日)
当線の果たしてきた役割と近年の動き
広島県北東部(庄原や東城)や木次線と併せて島根県東部から広島への人や物を運ぶ路線でしたが、中国自動車道が開通すると多くはこちらに移りました。かつては新見から広島まで全線走破する普通列車もありましたが、JR化後は管轄が変わる備後落合で系統分離され、さらに利用状況が大きく異なる三次駅でも系統分離され、運転本数も減らされています。車両もこの区間に関してはほぼ1両での運転です。
一応、平日朝の三次発庄原行きの列車は、1両の列車が高校生でいっぱいです。
特に利用が少ない東城〜備後落合間は乗車密度が8人とか9人という有様です。(管轄が変わるわけでも県境を挟むわけでもないのに、何故この区間だけを取り上げているかが不明。当て付けですか?)18きっぱーの利用が集中する昼過ぎの列車(なぜか三次発・新見発とも13:01)だけは利用が多いですが、それ以外はほぼ空気を運んでいる状態です。
三次〜広島間に関しても、広島寄り(特に下深川〜広島間)の利用が多く、三次の時点では発車・到着ともガラガラのことが多いです。三次〜広島間にも高速バスが走っていて、そちらを利用する人も多いです。
福塩線(府中〜塩町)
路線紹介→山陽本線(福山〜岩国)と周辺路線
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。府中以南の電化区間の利用が堅調なために存続しています。
当区間の乗車密度(2016年)
府中〜塩町:206人/日
(福山〜府中:6936人/日)
当線の果たしてきた役割と近年の動き
福塩線は広島県の福山と塩町(三次市)を結ぶ路線ですが、電化区間である福山〜府中間は沿線人口も多く利用も多いですが、非電化区間の府中〜塩町(三次)間は沿線人口は大きく減ります。三江線と併せて陰陽連絡ルートとしての役割もありそうでしたが、福山からは三次まで直通するのが最遠で、その先(山陰方面)へ定期列車が走ったことはありません。
近年は特に非電化区間の利用者が減っていて、非電化区間は減便が目立ちます。完全には併走しませんが、尾道自動車道(通行料は無料)も開通しました。
ここ2年ほど、乗車密度はやや増加しているようですが、これは三江線に引っ張られてのことと思われます。福塩線の列車には昔の写真が車内に展示してあったり、地元では一部の方が熱心に活動されているようですが、沿線に有名な観光地もなく今後が心配です。
木次線(宍道〜備後落合)
路線紹介→山陰本線(米子〜益田)と周辺路線 おろち号とスイッチバックの旅
国鉄分割民営化時の扱い
第2次廃止対象→「並行道路未整備」のため存続しました。その当時は島根・広島県境部分(出雲坂根・三井野原付近)の国道314号線が狭隘で、冬季は通行止になっていましたが、その後「奥出雲おろちループ」として2重ループを含む道路となっており、当時の存続の理由はなくなっています。
当路線の乗車密度(2016年)
204人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
かつては島根県・鳥取県と広島を結ぶ陰陽連絡線として急行「ちどり」が運転されていました。が、中国道の整備により高速バスに利用者は流れ、1990年ごろに廃止となり、その後は減便を繰り返しながら今に至ります。宍道駅を11時ごろ発車する備後落合行きは、終点備後落合駅で芸備線の列車と接続していて、かつての陰陽連絡ルートをかろうじてつないでいる状態です。この列車は青春18きっぷ利用期間は混雑します。
スイッチバックを含む出雲横田〜備後落合間は、旅行者以外は三井野原駅付近に住み、八川駅近くの学校に通う小学生が主なお客さんでしたが、彼らが利用すると思われる時間帯の列車は2000年ごろになくなりました。過疎のため、利用者がいなくなったのかと思っていましたが、コミュニティーバスが運行されていることがわかり、こちらを利用しているようです。
現在は「奥出雲おろち号」が運転され、たくさんの人が利用しているようですが、それ以外の利用は減り続けていて、「奥出雲おろち号」自体も車両の老朽化などでまもなく運行終了になると思われます。
また出雲横田〜備後落合間については、近年は積雪時は除雪などを行わずバスやタクシーでの代行輸送になっていたり、夏期はレールの温度が上昇したとかで運転を取りやめることが頻発しています。この点でも今後が心配です。
三江線が運行終了となり、「次は木次線だ」と地元の方は心配なさっているようです。
小野田線(居能〜小野田・雀田〜長門本山)
路線紹介→山陽本線(岩国〜門司)と周辺路線
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人を超す」のため存続しました。小野田市(現在は山陽小野田市。以下同じ)中心部への通勤通学利用者が多く利用してきたと思われます。
当路線の乗車密度(2016年)
470人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
山口県小野田市の北の外れにある山陽本線の小野田駅と小野田の工場地帯を結ぶ路線として機能してきました。かつて沿線には炭鉱(長門本山駅近く)やセメント工場(南小野田駅付近)にあり、それに関係する貨物輸送も盛んでした。実際、沿線には「セメント町」という地名もあります。
が、炭鉱の閉山やモータリゼーションの発展により貨物列車はなくなり、今では1両の電車が行き来するだけの路線になっています。小野田駅での乗り換えも階段の移動が必要になるなど便利とは言えず、近年の減便と併せて前述の「山陽本線と小野田の工場地帯を結ぶ」役割も怪しくなっている状況です。
また、一部区間を除いて路線バスも並行しており、今後どうなるか心配です。
筑肥線(山本〜伊万里)
路線紹介→佐賀・長崎編
国鉄分割民営化時の扱い
「幹線」のため廃止対象になりませんでした。が、博多付近の利用が多かったため「幹線」になったのであり、当区間だけなら「幹線」になったのか疑問です。
当区間の乗車密度(2016年)
236人/日(唐津〜伊万里)
当線の果たしてきた役割と近年の動き
かつての筑肥線は博多駅から山本駅を経て伊万里駅を結ぶ路線(当時は唐津駅へ経由せず)で、伊万里駅では松浦線(現在は松浦鉄道)と接続し、博多から西九州への別ルートのような存在でした。実際、博多から筑肥線経由で長崎まで走る急行「平戸」号が運転されていました。
その後、博多駅〜姪浜駅間は地下鉄化され、電化と線形変更で直接唐津駅に乗り入れるようにはなったものの、筑肥線は姪浜〜唐津間と山本〜伊万里間で分離される形になりました。先述の急行「平戸」はこの工事後は唐津〜長崎間の運転となり、松浦線が3セク化されると廃止になっています。
現在は博多〜唐津間は3〜6両の通勤電車で、山本(唐津)〜伊万里間は1〜2両の気動車で運転されており別の路線のようになっています。山本〜伊万里間はどう見ても利用者が増えているとは思えず、また当線と離れたところを通るものの唐津〜伊万里間には路線バスも走っていて、今後が心配な区間です。
吉都線(都城〜吉松)
路線紹介→鹿児島・宮崎編
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「平均乗車キロが30kmを超え、輸送密度が1,000人/日以上」のため存続しました。当時は熊本〜宮崎間の急行列車が当線を経由していました。
当区間の乗車密度(2016年)
466人/日。路線別に見た場合、九州内で最も利用が少ないようです。
当線の果たしてきた役割と近年の動き
日豊本線の一部として建設され、吉松駅では鹿児島本線(現在の肥薩線)と接続していました。その後、霧島神宮経由の新線開業により吉都線になっています。
熊本〜宮崎間の最短経路となることから、熊本〜宮崎間に急行「えびの」号、博多〜熊本〜宮崎間(当線経由)に特急「おおよど」号が運転されていましたが、日豊本線が電化されると「おおよど」は廃止、その後は「えびの」が走っていましたが、九州自動車道が当線に沿って建設されると、高速バスとの競争に勝てず、こちらも廃止になってしまいました。こういった経緯から、肥薩線八代〜吉松間と併せて「えびの高原線」という愛称がありますが、最近は聞かなくなりました。
その後は沿線の小林市やえびの市への通学輸送が主な役割になっています。車窓からは霧島連山を眺めることができます。鶴丸駅は縁起のいい駅名として知られています。
2018年3月のダイヤ改正では、当線の減便が地元マスコミで大きく報じられました。
日南線(南宮崎〜志布志)
路線紹介→鹿児島・宮崎編
国鉄分割民営化時の扱い
第3次廃止対象→「並行道路未整備」のため存続しました。どのあたりが「未整備」だったかは不明。
当区間の乗車密度(2016年)
779人/日
末端の油津〜志布志に限れば222人/日
当線の果たしてきた役割と近年の動き
宮崎と日南エリアを結ぶ路線です。現在は盲腸線ですが、かつては志布志駅からは志布志線や大隅線といった路線と接続していて、都城や国分へ行くことができました。志布志駅近くには、当時を偲ぶ鉄道公園があります。
現在は宮崎市への通勤通学路線として、あるいは青島や日南海岸などへの観光路線として機能していて、「海幸山幸」号も運転されています。また宮崎近くでは、宮崎空港線の特急も走ります。
が、「海幸山幸」号の終点の南郷駅から先は、特にテコ入れがされてない印象で、県境を越えることから利用者は少ないようです。
指宿枕崎線(山川〜枕崎)
路線紹介→鹿児島・宮崎編 青春18きっぷで西大山駅へ
国鉄分割民営化時の扱い
全線(※西鹿児島〜枕崎)の輸送密度4,000人/日以上だったため、廃止対象にはならず。
※ 現在の鹿児島中央のこと。以下同じ。
当区間の乗車密度(2016年)
301人/日(指宿〜枕崎)
当線の果たしてきた役割と近年の動き
指宿枕崎線は西鹿児島駅から敷設され、当区間に関して言えば1960年に山川〜西頴娃間が、1963年(昭和38年)に枕崎まで開業しています。
鹿児島市への通勤通学路線として、また指宿への観光路線として利用され、特に鹿児島中央近くでは利用者が増えすぎて車両をロングシート化する動きがあり、大変残念に思っています。
一方で山川〜枕崎間は沿線の過疎化が進んでいます。また枕崎〜鹿児島間を移動する場合は、当線を利用する(所要時間は2時間40分程度。1日6往復)よりも、路線バス(同1時間40分〜2時間程度、1日11往復)を利用した方が便利なため、利用者は路線バスに流れていると思われます。
2014年には、当区間が存廃検討対象になるとの報道がなされました。2018年春のダイヤ改正では、九州内の多くの路線で減便され大きく報道されましたが、当区間は対象外だったようで逆に不気味です。
一応の記載基準
私が訪ねた時の印象を元に独断で判断していますが、
近年、本数が減らされている。
乗車密度がJR発足時の半分以下
観光列車の運転など、テコ入れがなされていない。
高速化など、設備の更新が行われていない
並行バス路線があり、鉄道よりも本数が多い。
並行道路が過剰に整備されている。(特に高速道路)
といったことを考慮しています。
記載すべき路線(区間)であっても、不通区間のある路線(区間)や営業終了が決まった又はそれに向けた話し合いが始まっている路線(区間)は記載していません。
「国鉄分割民営化時の扱い」について
各路線・区間ごとに「国鉄分割民営化時の扱い」について述べていますが、これについて説明します。ウィキペディアの「特定地方交通線」「地方交通線」の項目に書かれていることのほぼ丸写しです。
1980年ごろの運賃値上げの際、1977〜79年の各路線の利用状況によって「幹線」「地方交通線」に分けられ、「地方交通線」は幹線よりも運賃が高く設定されました。(今も続いています。) 具体的にはおおむね乗車密度が8000人以上を「幹線」、4000〜8000人が「地方交通線」、そして4000人未満は「特定地方交通線」(運賃は「地方交通線」と同じ)とされました。
「特定地方交通線」とされた路線は、国鉄やJRの路線としては廃止し、路線バスや他事業者(主に第3セクター)へ移管することが適当とされた路線で、利用状況により第1次から第3次までに分けて廃止対象路線が決められました。利用状況には貨物輸送に関するものもありますが、ここでは省略します。
第1次廃止対象・・・営業キロが30km未満の盲腸線で、乗車密度が2000人/日未満。または営業キロが50km未満で、乗車密度が500人/日未満。
第2次廃止対象・・・乗車密度が2000人/日未満。
第3次廃止対象・・・乗車密度が4000人/日未満。
実際に国鉄分割民営化の前後にたくさんの路線がなくなりました。時刻表には第3セクターの時刻も記載されていますが、多くがこの時に移管された路線です。
ただし、「特定地方交通線」に指定される程度の乗車密度であっても、以下に該当する路線は除外されました。(いわゆる「敗者復活」事項)
1. ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1,000人超。
2. 代替輸送道路(当ページでは「並行道路」と記載)が未整備。
3. 代替輸送道路が積雪で年10日以上通行不可能。
4. 平均乗車キロが30kmを超え、輸送密度が1,000人/日以上。
1.は都市部(おおむね起点近く)では利用者が多いものの、それ以外では利用が少ない路線。4.は計測当時、長距離列車がその路線を経由していたり、沿線に観光地がある、または特定の主要駅以外に利用者が多い駅がない路線が該当しているようです。
2・3.は元から利用が少ない路線が多く、多くはその後に道路が整備されているので、どこも厳しい状況に置かれています。
このやり方の矛盾点
「路線ごと」に判別されたため、利用者が多い区間があっても、他が少ないということで廃止になった路線があります。伊勢線(現在の伊勢鉄道)のように、経由していた特急列車の利用者が乗車密度に反映されずに国鉄から切り離された路線もあります。また、どう見ても土讃線の延長にしか見えなかった中村線(現在の土佐くろしお鉄道)が、路線名が異なるとして切り離されています。
一方で、利用者が少ない短距離の「名無し支線」が、他区間の利用が多かったために存続しました。(その後廃止になった区間が多い)
乗車密度について
その路線・区間の利用状況を測るために多く使用されています。「輸送密度」「平均通過人員」など異なる用語が使われていることも多いです。単位は「人/日」だそうです。
1キロ・1日当たりの利用者数を示す数字で、次のように算出します。
(乗車密度)=(計測期間中の乗客の利用営業キロの総和)÷(その路線・区間の営業キロ)÷(計測期間の日数)
一例として
営業キロ108kmの路線で、3日間の利用者の乗車距離が以下のような場合の乗車密度を計算してみます。
乗車距離 | 人数 | 主な利用者属性(勝手な想像) |
---|---|---|
10km | 20人 | IK駅近くの学校に通う小学生 |
15km | 90人 | K駅近くの学校に通う中学生 |
20km | 50人 | IK駅、G駅近くの学校に通う高校生 |
30km | 30人 | G駅、M駅近くの病院に通うお年寄り |
50km | 30人 | 活性化協議会のメンバーの移動 |
108km | 40人 | 乗り鉄 |
(計測期間の各乗客の利用営業キロの総和)= 10×20 + 15×90 + 20×50 + 30×30 + 50×30 + 108×40= 9470
(乗車密度)=9470÷108÷3=29.23 … 上記を営業キロ(108)と日数(3)で割った。
となり、乗車密度は29.23人/日となります。上の例はある路線をイメージして作ったものですが、この数字だと大赤字です。
とはいうものの・・・
実際、乗車密度を計算する元となる「各乗客の利用営業キロの総和」をどのように調べているのかが全くの謎です。列車ごとに人員を配置し計測するわけには行きません。一応、乗車券や定期券の発売状況から調べることができるのでしょうけど、そうなると青春18きっぷなどの乗り放題きっぷを使っている人がカウントされないことになります。
一応、JR四国では、乗り放題きっぷの利用を加味した乗車密度を公開していますが、「対象となるきっぷはJR四国エリア内で発売されたもの」との但し書きがあるので、JR四国エリア外で発売されたものについては不明です。
というわけで
利用目的はどうであれ、あなたのご乗車が、少しでも乗車密度算出の対象になっていただきたいので、可能な限り青春18きっぷや北海道&東日本パスといった乗り放題きっぷは使わないことをお願いいたします。(←「お前が言うな」と言われそうですが)
発駅と着駅が記載された乗車券(窓口やみどりの券売機で購入)か、「発駅から○○円区間」の乗車券は降車時にきっぷを所定の場所に入れるか駅員さんなどに必ず渡していただけると幸いです。
当然ですが、無理は言えません。できる範囲で協力いただければ十分です。